ある日の事だ。
魔法界から、自称『最強のライバル』が、はるばるやって来た。
「お前との決着をつける為に、わざわざ人間界まで来てやったぞ!」
久々に見る彼女は、相変わらず黒地に真紅の模様を描いた、趣味の悪いマントを羽織っていた。
俺はため息を吐いて、玄関を閉じようと試みた。
「待て! そんなに私に負けるのが恐いか!?」
悪質な新聞勧誘員のごとく、隙間に足をねじ込まれる。
俺は再び、ため息を吐いた。
「イル――、お前、相変わらず面倒な奴だな」
「逃げるのか? そうか、そんなに私が恐いか!」
イルが勝ち誇った顔で言う。
これまで278戦0勝278敗の癖に、どこから自信が沸いてくるのか、不思議だ。
「あー、はいはい。俺の魔法を見せてやろー」
*
「むぐっ、むぐぐぅ!」
俺の魔法の前に、イルは呆気なく全身を拘束された。
縄で縛られ、口には猿ぐつわを噛まされた格好だ。
「その状態じゃ、詠唱も出来なければ、武器も出せないだろ。大人しく帰れ」
留守にしている柚季には言えないが、これまでの戦いの最中に、何度かイルを犯した事もある。
しかし、性格の鬱陶しさゆえ、あまりそそられない。
今日はさっさとご帰宅願おう。
猿ぐつわを外してやり、もう一度帰る様に言った。
「ま、まだ、負けていない!」
「いや、どう見ても負けてるだろ。もう一度口を塞いでやろうか?」
それでもイルは、負けを認めなかった。
悔しげな顔をして俺を睨みつけていたが、何かを思いついたのか、パッと表情が変わった。
「なんだ? ようやく帰る気になったか?」
「ふふふ、私はまだ犯されていない! 男女の戦いにおける決着は、陵辱だけだ! 勝負は続いているぞ!」
まくし立てるように、謎のアホ理論を展開し、イルは魔法を発動させた。
眩い光が玄関を埋め尽くし、俺はたまらず目を瞑った。
背後でイルの詠唱が聞こえた。
慌てて防御結界を張るも、寸での所で間に合わなかった。
魔法で生み出された鋭利な刃が、頬を掠めた。
「ちっ……俺とした事が、油断したぜ」
光が収まりつつある中、振り返ると、イルは拘束を解き、俺を指していた。
「次は外さない! 負けを認めるなら今の内だぞ!」
油断していた自分にも苛立つが、イルはその100倍だ。
犯されるまで負けを認めないのなら、犯すまでだ。
俺は魔法の詠唱を始めた。
「ふふふ、どんな魔法を使おうとも、無駄だよ!」
イルが自信満々に取り出したのは、どう見ても黒いアナルプラグだった。
思わず呪文を唱える口を止めてしまった。
「それで……それがなんなんだ?」
「これには強力な魔力が込めてある。パワーアップだ!」
言い終えると、かぷっ、とアナルプラグを口に含み、すぐに抜き出した。
唾液でてらてらと光るそれを、下半身へ。
マントをたくし上げ、その下に身に着けているラバースーツに覆われた尻へと当てた。
「んっ……んん……」
少し苦しげに息を吐いていたが、何とか収まったのだろう。
不敵な笑みを浮かべて、俺へと向き直った。
何か仕掛けて来るより先に、と、俺は詠唱を再開し、魔法を発動させた。
「……。あれ? …………! ま、魔法の詠唱が出来ない!?」
「魔法封じだ。お前には解けないだろ? さらに、もう一度縛り上げてやるぜ」
「くっ……!」
戦況は簡単に覆り、イルは再び縛り上げられた。
さっきと違うのは、イルのアナルにはプラグが収まっている事と、俺にちんぽをぶち込む気がある事だ。
「詠唱は封じてあるから、猿ぐつわは、いらないな」
言いながら、イルの身からマントを剥ぎ取る。
真っ黒いラバースーツに、イルの少し貧相な身体が浮かび上がっていた。
「相変わらず変態染みた格好をしているな」
「機能性と防御に優れた特製スーツだ!」
イルの言葉に、嘘や偽りはないだろう。
だとしてもだ。俺の前では、全てはエロに変わり、変態責め具に成り果てる。
新たな魔法を詠唱した。
縄の先端が緑に変色し、ちんぽの様な形に膨らむ。
触手と化した縄の一部は、ぬらぬらと粘液と分泌しながら、イルの身体を這い上がる。
首から下を覆うラバースーツの入口は、襟元だけだ。
「なっ、何をするつもりだ!」
「何って、犯す準備だよ。そうしなきゃ、勝負は終わらないのだろう?」
「う、うう……あれは……」
「今更撤回しても、聞く耳は持たん」
→【2】へ続く◆目次へ戻る